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【技術士補「上下水道」】H27年度過去問解説

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本記事は、平成27年度技術士第一次試験【上下水道部門】過去問の35問全ての解説です。

Ⅲ-1

Ⅲ-1 水道の歴史に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

  1. 水道の歴史はギリシャ,ローマの古代都市にさかのぼるが,水道の目的は場所的な水不足を解消し水利用の利便性を得るために水路によって水を輸送して供給することであった。
  2. 産業革命後の急速な都市化に伴い,衛生状態が悪化し,これを改善する目的でヨーロッパでは19世紀以降,砂ろ過による浄水が行われるようになった。
  3. 我が国では江戸時代に初めて水道が本格的に作られたが,開水路導水による無浄化・流し放しであり,開国以降,コレラなどの消化器系伝染病が猛威を振るっていた。
  4. 閣港場からの消化器系伝染病の上陸を止め,国際的な評価を下げないために,1887年,イギリス人技師H.S.パーマーの設計の下,横浜に我が国最初の近代水道が建設された。
  5. 横浜に近代水道が建設された後,函館,長崎,神戸,下関など各地に水道が建設されることで,昭和初期には衛生状態は全国的に急速に改善し,消化器系伝染病の発生はほとんどなくなった。

5. 不適切

日本の近代水道は、1887年(明治半ば)、イギリス人技師「ヘンリー・スペンサー・パーマー」氏の指導のもと、横浜に初めて創設されたので、昭和初期でありません。ちなみに、「近代水道」とは、川などから取り入れた水を濾過ろかして、鉄管などを用いて有圧で給水する水道のことです。

Ⅲ-2

Ⅲ-2 上水道の計画に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

  1. 計画給水量の算定に用いられる負荷率は, 1日最大給水量に対する1日平均給水量の割合をパーセントで表したもので,一般的に小規模の都市ほど高くなり,都市の規模が大きくなるにつれて低くなる傾向がある。
  2. 水需要予測に当たっては,節水や水の循環利用等の水需要に影蓉を与える要因や,地下水利用の動向等にも配慮することが必要である。
  3. 用途別使用水量とは,使用水量を用途別に分類したもので,生活用水量,業務・営業用水量及び工場用水量などである。
  4. 計画有効率は,今後の給・配水整備計画などを反映させ設定することとするが,漏水 防止対策の将来計画など諸条件に配慮して可能な限り高い目標値とすることが望ましい。
  5. 目標とする配水管の最小動水圧は150 kPa以上,最大静水圧は740 kPa以下を基本とする。

1. 不適切

負荷率は、給水量の変動の大きさを示すもので、一般的に小規模の都市ほど低くなり、大都市ほど高くなる傾向がある。また、都市の性格や気象条件等によっても影響されます。

Ⅲ-3

Ⅲ-3 上水道における地下水に関連した生物障害問題と対策に関する次の記述のうち,最も適切なものはどれか。

  1. 一般に地下水の水質は比較的安定しているが,生物障害が発生することがある。主な地下水における生物障害は,着色・異臭味・肉眼的小動物等の流出障害などであり,これらは地下水性の生物によるもので,地表水由来の生物の混入のおそれはない。
  2. 地下水は往々にして鉄,マンガンを含み,また酸素に富み,多くの有機物を含んでいるものがあり,このような水には鉄細菌が繁殖することがある。鉄細菌は,水中に溶けている鉄やマンガンを還元し菌体の表面などに沈着する性質がある。
  3. 鉄細菌が井戸内に多量に繁殖している場合は,遊離残留塩素として5mg/L以上になるように塩素剤を障害箇所に注入し,長時間接触させた後,水圧をかけて洗浄排除する。その後,遊離残留塩素を0.1~0.2 mg/L程度に保ち,障害生物の繁殖を抑制する。
  4. 井戸や伏流水では, ヨコエビやハリガネムシなどの地下水性の小動物が生息している場合がある。しばしば発生する場合は塩素剤を障害箇所に注入し,洗浄排除することで対応する。
  5. 地下水で起こる臭気障害の原因生物は,集水施設,接合井,井戸の壁面や管内に発生する真菌,放線菌,鉄細菌,藻類などで,臭気はそれらの着生,繁殖と死滅,腐敗に起因することが多い。

5. 適切

  1. 地表水由来の生物の混入のおそれはあります
  2. 地下水は二酸化炭素も富み多少の有機物を含んでいるものがあります。
  3. 遊離残留塩素を0.2~0.5 mg/L程度に保地ます。
  4. ヨコエビやハリガネムシなどの地下水性の小動物がいることは、直接衛生上の問題となることではないが、砂ろ過などで除去して給水することが必要です。

Ⅲ-4

Ⅲ-4 浄水場の沈砂池に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

  1. 位置は,可能な限り取水口に接近して堤外地に設ける。
  2. 池内平均流 速は, 2~7cm/秒を標とする
  3. 池の幅は,長さ1/3~1/8を標準とする
  4. 池の高水位は,計画取水最が流入できるように,取水口の計画最低水位以下に定める。
  5. 池の有効水深は,3~4mを標準とし,堆砂深さを0.5~1mを見込む

1. 不適切

沈砂池の位置は、なるべく取水口に近接して堤内地に設けます。

Ⅲ-5

Ⅲ-5 凝集に関する次の記述の,○に入る語句の組合せとして最も適切なものはどれか。

原水中に含まれる粘土等の微粒子やコロイドはほとんどが ㋐ の電荷を帯びており,互いに反発しあって安定して水中に存在している。これにアルミニウム塩や鉄塩など金属系の凝集剤を加え,できるだけ急速で撹拌し,微粒子やコロイド表面の ㋐ の荷電を凝集剤の ㋑ の電荷で中和して濁質を微小なフロックにする。この段階を ㋒ という。 ㋒ を経た微小フロックは緩やかな撹拌を加えることによって,互いに衝突を繰り返して大きなフロックヘと成長する。この過程を ㋓ といい,相互の粒子の間に働く結合力のほかに,添加した凝集剤の持つ ㋔ よって達成される。

選択肢
1.フロック形成凝集処理架橋作用
2.凝集処理フロック形成架橋作用
3.凝集処理フロック形成吸着作用
4.フロック形成凝集処理吸着作用
5.凝集処理フロック形成架橋作用

5. 適切

回答の問題文通り。なお、凝集剤としては、水道用硫酸アルミニウム、水道用ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄及び水道用ポリシリカ鉄が用いられます。

Ⅲ-6

Ⅲ-6 浄水処理における沈殿池について,次の(ア)~(エ)の説明に当てはまる沈殿池の最も適切な組合せはどれか。

  1. 薬品注入,急速撹拌,フロック形成,沈殿処理を1つの槽の中で行う。
  2. 薬品注入,混和,フロック形成を経て大きく成長したフロックをできるだけ沈殿させ,急速ろ過池への負担を軽減する。
  3. 緩速ろ過池と組み合わせて設けられるもので, 自然沈降によって懸濁物質を除去する。
  4. フロックの沈降距離を短くすることによって,沈殿時間を減少させ,沈殿池の処理能力を向上させる。
選択肢
1.高速凝集沈澱池普通沈殿池傾斜沈殿池薬品沈澱池
2.薬品沈澱池普通沈殿池傾斜沈殿池高速凝集沈澱池
3.傾斜沈殿池薬品沈澱池普通沈殿池高速凝集沈澱池
4.普通沈殿池高速凝集沈澱池薬品沈澱池傾斜沈殿池
5.高速凝集沈澱池薬品沈澱池普通沈殿池傾斜沈殿池

5. 適切

回答の問題文通りです。

Ⅲ-7

Ⅲ-7 浄水処理の急速ろ過に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

  1. 急速ろ過池でろ過するのみではコロイドや懸濁物質の除去は期待できないため,必ず凝集剤を用いて処理を行う。
  2. マイクロフロック法とは,低水温・低濁度原水を対象として,凝集剤を注入,混和した後,フロック形成と沈殿処理を経ることなく,ろ過を行うものである。
  3. 急速ろ過法のろ過速度は,砂単層は120~150 m/日,多層は240 m/日以下が一般的である。
  4. ろ層の洗浄は,逆流洗浄に表面洗浄を組み合わせた方式を標準とし,必要に応じて逆流洗浄と空気洗浄を組み合わせたものにする。洗浄には,原則として原水を用いる。
  5. クリプトスポリジウム等による水道原水の汚染のおそれが高い場合には,ろ過池の出口の濁度を0.1度以下に維持するよう運転管理を行う。

4. 不適切

急速ろ過の洗浄には、原則として浄水を用いる。

Ⅲ-8

Ⅲ-8 消毒剤にに関する次の下線部のうち,最も不適切なものはどれか。

水道水の消毒は,1.水道法の規定により塩素によるものとなっており,その塩素泊毒剤として,現在は次亜塩素酸ナトリウムが主として使用されている。次亜塩素酸ナトリウムは,2.日光,特に紫外線により分解が促進され 3.保管温度が低いと分解が速く,有効塩素濃度が急激に減少し,逆に塩素酸濃度が急激に増加する。このような状況や浄水における検出状況を踏まえ,平成20年4月から 4.塩素酸の水質基準項目(基準値0.6 mg/L以下)が追加された。市販の水道用次亜塩素酸ナトリウムは,製造時の不純物として,5.臭素酸が含まれている

3. 不適切

次亜塩素酸ナトリウムは保管温度が高いと分解が速く、有効塩素濃度が急激 に減少し、逆に塩素酸濃度が急激に増加する。貯蔵槽・容器は、直射日光は避け気温の低い地下室等に設置するのが望ましい。

Ⅲ-9

Ⅲ-9 次のうち,紫外線消毒に関する記述として最も不適切なものはどれか。

  1. 濁度や色度が高い水に適している。
  2. 水に臭味を生ずるおそれがない。
  3. 残留効果がない。
  4. クリプトスポリジウムの不活化に有効である。
  5. 過剰注入の危険がない。

1. 不適切

紫外線消毒のメリットは、照射のみで済むため接触時間が短く薬品が不要、消毒副生成物が発生しにくい、装置が単純で比較的安価などがあります。一方のデメリットとして、濁度が高いと紫外線消毒の効果が低減してしまうなどがあります。

Ⅲ-10

Ⅲ-10 浄水処理における膜ろ過に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

  1. 浄水処理に主に使用されている膜ろ過は精密ろ過と限外ろ過であり,除去対象物質は懸濁物質を主体とする不溶解性物質である。
  2. 膜ろ過流束とは,単位時間に単位膜面を通過する水量のことである。
  3. 全量ろ過方式の場合,一般的に,膜面流速を一定以上に確保すれば,膜面への付着物質の蓄積が抑制される。
  4. 膜モジュールの通水方式には,処理対象水を膜の外側から供給する外圧式と膜の内側から供給する内圧式とがある。
  5. ナノろ過法はふるい分けに加え,表面荷電によるイオン除去能を有する膜ろ過法である。

3. 不適切

問題3.は全量ろ過方式ではなくクロスフローろ過方式の説明です。
なお、全星ろ過方式膜供給水の全置をろ過する方式であり、従来の砂ろ過と同じ方式です。砂ろ過と同じように定期的に洗浄を行います。クロスフローろ過方式膜面に対し平行な流れを作ることで膜供給水中の懸濁物質やコロイドが膜面に堆積する現象を抑制しながらろ過を行う方式です。一般に膜面流速が高いほど膜面への付着物質の蓄積が抑制されます。

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